バリューチェーン分析とは?

バリューチェーンとは?

バリューチェーンという言葉は、1985年にマーケルポーターが「競争優位の戦略」という書籍の中で使用した言葉です。バリューのチェーンということで、日本語では「価値連鎖」と訳されますが、マイケルポーターは、企業の事業プロセスが顧客に対してどのような価値を創造するのかを把握するために、企業の活動を主活動(現場活動)と支援活動に分類し、事業プロセスを分析することを提唱しました。

マイケルポーターのいう主活動(現場活動)とは、商品が顧客に届くまでの流れの各プロセスで商品に価値を付加していくことに関する活動を指し、支援活動とは、顧客へ商品を届けるまでの流れを支援する活動を指します。主活動(現場活動)には、購買物流、製造、出荷物流、販売・マーケティング、サービスというプロセスがあり、支援活動には、全般管理(インフラストラクチャ)、人事・労務管理、技術開発、調達活動というプロセスがあります。

例えば製造業の場合、購買物流とは原材料の仕入れおよび保管を、製造とは製品または半製品への加工を、出荷物流とは製品の出荷を、販売・マーケティングとは製品の販売を、サービスとは販売後のメンテナンスやアフターサービスを意味します。こうした各工程を支える支援活動が行われています。

一方で小売業の場合、製造業とは少し異なるバリューチェーンとなっています。購買物流に該当する部分が出店および仕入れ、製造に該当する部分が商品開発、出荷物流に該当する部分が中間業者への出荷、販売・マーケティングに該当する部分が広告宣伝やプロモーションや販売、サービスに該当する部分がクレームがあった場合の対応となります。

バリューチェーン分析のメリット

企業内で様々な活動の流れや相互のつながりを分析することにより、市場のニーズに柔軟に対応することが可能となります。そして、主活動を構成する各要素の効率を上げるか、競合他社との差別化を図ることで企業の競争優位が確立ができることがバリューチェーン分析のメリットですが、もう少し詳しく記述してみます。

1.企業の強みと弱みの認識

企業内の様々な活動の流れや相互のつながりを分析する中で、企業内に隠れている強みと弱みを把握することができます。つまり知的資産を認識することができるのです。企業内の強みがわかれば、それを今後どのように活かしていくのかを考えるきっかけになりますし、その企業が成功するための条件を把握することもできます。また、企業の弱みがわかれば、それをどのように解決するのか、すなわち、自社で解決を図るのか、それを強みとする他社と連携して解決を図るのかなどを考えていくきっかけになります。

2.競合他社との差別化戦略

市場は常に変化し続けています。今、市場ニーズが高くても、将来どうなるかはわかりません。そのため、競合他社の動向をつかみ、予測していくことは重要です。丁寧なバリューチェーン分析を行うことにより、自社と他社の強み・弱みを把握し、市場の状態やニーズの予測を行うことで、現在および将来の戦略について考えていく必要があります。

3.コスト戦略

バリューチェーン分析を行うことにより、各活動のプロセスが見えてきます。この各プロセスで高い付加価値を創出することができればよいのですが、コストという問題が出てきます。各プロセスごとに創出する付加価値とそれに伴うコストの関係を認識し、各プロセスと全体をみながらバリューチェーンを再設計する必要があります。また、コスト次第では市場で優位なポジションをとることも可能となります。

バリューチェーン分析のデメリット

バリューチェーン分析は、原則として現在の自社を分析することしかできません。ここがバリューチェーン分析のデメリットといえます。企業の経営は過去から現在、そして現在から将来にわたって流れています。そのため、まずはバリューチェーン分析で現時点の自社をしっかりと把握することは大切です。しかし、それだけにとどまらず、現在の強みや弱みを構築してきた過去と向き合い、過去のどのような活動が現在のこの強みや弱みと関連しているのか、そして現在のこの強みと弱みをどうすれば将来あるべき姿になっていくのかを考えていくことが重要といえます。

PPM(プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント)分析とは?

PPM分析とは?

PPM分析とは、自社製品のライフサイクルを分析する手法で、アメリカのボストン・コンサルティング・グループが開発した手法です。PPM分析は、企業が多角化戦略を展開する際に、複数の事業間でいかに適切に企業の経営資源を配分していくのかを検討する際に有用です。

PPM分析では、自社の製品のライフサイクルを、「市場成長率」の高低と「市場シェア」の大小で軸をとり、4つのブロックに分けます。この4つのブロックそれぞれで、どのように経営資源を配分すべきかを決定していきます。「市場成長率」や「市場シェア」とまでいえる製品がない中小企業や小規模事業者は、市場成長率ではなく売上高の伸び率に置き換えたり、市場シェアを販売数や顧客数に置き換えたりして検討してみるのも良いでしょう。

問題児

市場成長率は高いのに市場シェアが小さい状態の事業分野を指します。市場成長率が高いため、市場の成長にあわせた投資が必要となります。この状態が続くと事業を圧迫する可能性があるため、早めに「花形」に移行させるか、「負け犬」になると見極めるかして、適切な対応をしていく必要があります。本来は、「問題児」から「花形」へ移行し、その後「金のなる木」へ移行するのが一番望ましい姿です。

負け犬

市場成長率は低く市場シェアは小さい状態の事業分野を指します。事業の最終の状態ということもありますし、事業をうまく成長させられなかったり、投資に失敗した状態ということもあります。負け犬の事業分野から這い上がることは非常に難しく、撤退を含めて考慮すべき事業といえます。

花形

市場成長率は高く、市場シェアは大きい状態の事業分野を指します。問題児から花形へ移行してくるものもあるでしょう。この事業分野のものは利益もまだ十分には出ないため、金のなる木に育てていく必要があります。

金のなる木

市場成長率は低いけれど、市場シェアは大きい乗田の事業分野を指します。追加投資をしなくても収益の上がる事業分野です。しかし、いつまでも永遠に金のなる木でいられる事業分野はありません。金のなる木から問題児に移行する事業もありますし、負け犬に移行する事業もあります。市場成長率や市場シェアの動きをみながら、再度付加価値化を図り、花形へ戻す方向を模索したり、場合によっては撤退を考えたりするなど、適切な対応をしていく必要があります。

 

 

6つのパス

6つのパスとは6つの経路のことです。これは競争のない新市場を創造する戦略です。競争のない新市場のことを「ブルーオーシャン」といい、ブルーオーシャンを考える際に6つのパスの戦略を使います。

経路1:代替品・代替産業

自社の競合は同業種の他社とは限りません。もちろん同業種の他社は競合ですが、異業種にも競合がいるということです。例えば、マクドナルドの競合はロッテリアやモスバーガーなどだけではありません。マクドナルドを利用するお客様のことを考えてみましょう。マクドナルドをランチで利用するお客様をターゲットにするならば、マクドナルドの競合は、ロッテリアやモスバーガーなどだけでなく、お弁当屋さん、スーパーマーケット、ランチ提供店など様々なところとなります。

このように「代替品」となる場合とは別に、用途はまったく異なるけれど、ある目的に着目した場合に代替になり得る場合もあります。例えば、カラオケとパチンコを考えてみましょう。カラオケは歌を歌う目的で入店するところ、パチンコはギャンブル性のある遊びをする目的で入店するところです。先ほどのように「お昼を食べる」という目的というように入店の目的は一致しないのが通常です。しかし、次の予定まで1時間空いてしまった人が、1時間という時間をつぶす目的で入店する場合を想定してみて下さい。この時、カラオケを選ぶ、パチンコを選ぶ、喫茶店を選ぶ、美術館を選ぶなど、選択の余地はたくさんあるわけです。もともと各施設のターゲット層はまったく異なるのに、ある目的に特化すると、その目的という意味では代替となりうるわけです。

経路2:業界内の別戦略

A社とB社は同じ「教育産業」という業界内にいるとします。A社は子供相手、B社は社会人相手とします。同じ業界内でもターゲット層が異なれば異なる戦略をとっているはずです。しかし、ターゲット層が異なる同じ業界のやり方、考え方、戦略等を見ると、自社の今後の展開において大きなヒントとなることもあります。

経路3.顧客の連鎖

顧客と一言で言っても、顧客=利用者とは限りません。例えば、ランドセルの利用者は小学生です。しかし購入者は父母や祖父母です。また、顧客=利用者であったとしても、顧客が単独で判断しない場合もあります。例えば住宅を購入する場合、顧客=購入した住宅の利用者は20代~40代位の人であるケースが多いと考えられます。しかし購入前に両親や知人などに相談をし、その人の意見に従うことがあります。つまり、顧客だけを見ていてはわからない、顧客の心理に影響を与える人の存在があるのです。

経路4.関係業界、補完材

ある商品が売れる時、関連商品も一緒に売れることが多いです。例えば、パソコンを購入した人は、プリンター、プリンターのインク、マウス、延長コード、パソコン用の机なども一緒に購入する可能性があります。パソコンのメーカーやプリンターのメーカーだからといって、そのものだけを見るのではなく、関連する商品にも目を向けると色々なビジネスチャンスが見えてきます。

経路5.機能志向と感性志向の切り替え

人が商品を購入する時、特定の機能を重視して購入する場合と、デザイン性やブランドのイメージなどといった感性を重視して購入する場合とがあります。例えば、ノートパソコンを購入するとします。この時、ワープロ機能と表計算機能とメールとネット検索ができればよいという機能を重視して購入するのであれば、どのノートパソコンでもほとんど対応できるでしょう。しかし、キーボードの配置はこういうものがよいとか、このメーカーのものが良いとか、このデザインが良いとかなど、感性によって選択されるケースは多々あります。

逆に、おしゃれという感性を前面に出してビジネスをしていた理容業界、美容業界の中には、「機能性」を前面に出したビジネス戦略をとっているお店もあります。短時間で最低限のカットだけを安く行う美容院や理容院です。

このように機能志向を重視していた企業は、少し感性志向を取り入れられないかを検討したり、感性志向を重視していた企業は、少し機能志向を取り入れられないかを検討したりすると、今までに見えていなかったものが見えてくることがあります。

経路6.将来の洞察

事業計画を立てる際にも必ず行う外部環境の検討。法律、社会、経済などの外部環境が今後どのように変化していくのか、その変化によって顧客のターゲットがどう変わるのか、顧客のニーズがどのように変わるのかなどを常に予測していくことが重要です。新しいターゲット層に向けた対策を考えたり、新しいニーズに応えるための対策を考えたりするとよいでしょう。

アンゾフの成長マトリックスとは?

アンゾフの成長マトリックスとは?

アメリカの経営学者であるイゴール・アンゾフは、1965年に「戦略経営論」を出版しました。その中で、企業が経営戦略を立てる際に、狙う市場が既存か新規か、という軸と、企業が扱う製品が既存か新規か、という軸とで四つのマトリックスを作りました。このマトリックスのことをアンゾフの成長マトリックスといいます。

既存製品×既存市場=市場浸透戦略

既存の市場で既存の製品を販売することによって事業拡大を目指す企業は、市場浸透戦略を選択するのが有用です。既存の製品の購入客へ既存製品を販売するため、市場浸透戦略は、製品の購入量を増やしたり、製品の購入頻度をアップさせたりするために、製品の価格改定や広告戦略を実施したり、製品のサイズ変更をしたりなどする戦略です。

既存市場×新規製品=新製品開発戦略

既存の市場で新しい製品を販売することによって事業拡大を目指す企業は、新製品開発戦略を選択するのが有用です。新製品開発戦略は、市場ではなく、現在の製品に求められている機能に新しい機能や特質を加えることで差別化したり、新製品に付加価値を付けてアップグレードさせたりする戦略です。

既存製品×新規市場=新市場開拓戦略

既存の製品を新しい市場で販売しようとする企業は、新規市場開拓戦略を選択するのが有用です。新市場開拓戦略は、既存商品を販売するため、製品の役割を変えてターゲット客を変えたり、製品の販売エリアを変えたりして新しい市場の見極めつつ販売する戦略です。

新規製品×新規市場=多角化戦略

新しい製品を新しい市場で販売しようとする企業は、多角化戦略を選択するのが有用です。多角化戦略は、今までとは異なる製品を、今までとは異なる市場で販売するため、多くの点で変化することが求められ、リスクが高い戦略です。

多角化戦略には4つの種類があります。

1.同分野の多角化

これは同じ分野で事業を拡大させる多角化の方法です。例えば、洗濯機の製造メーカーが、洗濯機を購入した顧客に対して掃除機を製造販売するなど、顧客ニーズと関連した製品を販売するため、他の多角化の方法と比べて成功確率が高くなります。

2.関連機能の多角化

これは既存製品を製造しているメーカーがその販売まで事業展開する方法です。例えば、カレー粉の製造メーカーがカレー屋を出店するなどです。この場合、カレー粉の市場シェアとカレー屋の市場シェアを一気に拡大することができる可能性がある一方で、例えばカレー粉の製造過程で何か問題が発覚したりすると、カレー屋の市場も大きな悪影響を与えることになります。

3.経営資源集中化による多角化

これは既存製品や既存のチャネルに経営資源を集中させることにより、既存製品と関連付けた多角化を行う方法です。既存製品と関連づけられていいるため、顧客が店舗や商品に対して最初に抱く「信じない」という心理的なハードルを下げることができます。

4.無関係な市場への多角化

これは既存製品とまったく異なる市場へ参入する多角化の方法です。今まで築いてきた事業と無関係な市場への参入のため、リスクが高くなります。しかし、その多角化が成功した時には、既存の事業とは異なる事業が確立されるため、既存事業の市場が縮小するなどのリスクの回避策となります。

5.どの多角化がおすすめか?

アンゾフは、自社の状況を正しく把握し、それに合わせてトレンドを分析していくことを推奨していきます。なぜなら、上記4つの多角化戦略には一長一短があり、どれが一番良いというものではないからです。各社がどの多角化戦略を実施するかは、各多角化のメリットとデメリットを踏まえたうえで、自社の状況、外部環境をよく分析して決定すべきです。

VRIO分析とは?

VRIOとは?

VRIO分析とは、1991年にアメリカのジェイ・B・バーニー(Jay B. Barney)教授が発表した経営資源に基づく戦略論をフレームワーク化したものです。VRIO分析とは、企業の競争優位性を判断するために、企業が有している経営資源を分析する手法で、VRIOとは、価値(V=Value)、希少性(R=Rareness)、模倣可能性(I=Imitability)、組織(O=Organization)の頭文字を取った用語です。

このVRIO分析により、企業内に存在する強みと競争優位性を見極め、新たな競争優位性を生み出したり、現在の競争優位性を維持向上させたりするための施策を講じていくことができます。

VRIOの4つの内容は以下のとおりです。

1.経済価値・・・市場において自社が有している経営資源に価値があるかどうかをみます。価値がなければ顧客が創造できない可能性がありますが、この価値を持てば企業競争力が高くなり、競合より優位に合ってる可能性が高くなります。

2.希少性・・・市場において自社が有している経営資源に希少性があるかどうかをみます。希少性が高ければ競合他社が参入しづらく、希少性が低ければ競合他社が参入しやすくなります。

3.模倣困難性・・・市場において自社が有している経営資源が真似されやすいかどうかをみます。真似されやすい経営資源だと、現在は自社が優位に立っていても、競合他社が真似して追いつかれてしまう、場合によっては追い抜かれてしまう可能性があります。模倣困難性の高い経営資源を持つと企業競争力がアップします。

4.組織体制・・・自社が有している経営資源を、有効に、最大限活用できる組織体制となっているかどうかをみます。今は経営資源が少ないとか、弱い経営資源しかなくても、持っている経営資源を最大限に生かせる組織体制を整えて、可能な限り強い競争力を有することが大切です。そしてより強い経営資源を育てていく必要があります。逆に、どんなに素晴らしい経営資源を有していても、それを活かせる組織体制が整っていなければ、その経営資源の本来の効果は発揮できず、宝の持ち腐れとなってしまう可能性があります。

VRIO分析のまとめ方

VRIO分析を行ったら、各々の結果をまとめていく必要があります。このまとめ方には、一覧表形式にする方法と、フローチャート形式にする方法とがあります。

・一覧表形式
フローチャート形式に比べて情報量は多くなります。つまり、施策を決めていくのに有用な情報が多く得られます。しかし、その分、1つ1つの経営資源を分析するのに手間や時間がかかってしまいます。

・フローチャート形式
フローチャート形式は、「NO」という判定が出ると、それ以降の評価を行いません。そのため、情報量は最低限となります。その分、1つ1つの経営資源を分析するのに手間や時間がかかりませんので、多くの経営資源を分析しやすくなります。

このように、一覧表形式にもフローチャート形式にもメリット・デメリットがありますので、これらを踏まえ、最適な分析を行い、その結果をまとめていくのが有用です。

VRIO分析の問題点

VRIO分析は知的資産の分析といえます。そのため、社会的価値を評価することが難しいという問題があります。

経済的な価値は数値化しやすく、良くも悪くも目に見えやすい分析となります。経済的な価値も目に見える数値だけで判断すると、足元をすくわれることもありますが、目安となる数値があるだけ、目標設定や評価をしやすくなるという点は否めません。

これに対して社会的な価値を評価するとなると、数値には出てこないため、主観が強くなる可能性も否めません。顧客や消費者に対する価値、社会に対する価値、その評価は人によって異なってくる可能性があるため、企業内で統一の基準を設けるなどして、同じ視点で評価し、議論していくこと必要があります。主観で評価したもので議論しても論点がずれてしまうからです。

次に、VRIO分析には、顧客ターゲットを絞っておかないと相反する結果が出てしまうという問題点があります。例えば、大量生産品でも構わないので安さを求める顧客ニーズもあれば、高価でもよいから手作り商品(または希少性のある商品)を求める顧客ニーズもあります。どちらの顧客ニーズに合わせるのかにより、多くの面で異なってきます。そのため、自社の商品サービスの性能、性格、特徴をしっかりと把握し、正しい顧客ターゲットに向けた施策を講じる必要があります。

7S分析とは?

7Sとは?

7S分析は、アメリカのマッキンゼーというコンサルタント会社によって提唱された企業戦略における7つの要素の関連性を示したものです。7Sとはハードの3Sとソフトの4Sとに分かれます。ハードの4Sは変化をさせるのに時間を要し、ソフトの3Sは比較的変化させやすいものとなっています。

  • ハードの3S(組織の構造に関するもの)
    (1)戦略(Strategy):競争優位性を維持するための事業の優位性や方向性
    (2)組織(Structure):企業の形態や組織構成
    (3)システム(System):人事評価精度、採用制度、会計制度などの組織の仕組み

 

  • ソフトのS(人に関するもの)
    (4)価値観(Shared Value):従業員で共有している企業の価値観
    (5)スキル(Skill):営業力、技術力、販売力など企業全体の能力
    (6)人材(Staff):経営者や従業員個々人の能力
    (7)スタイル(Style):社風、企業文化

これらを図式化すると下記のようになります。

https://www.mckinsey.com/business-functions/strategy-and-corporate-finance/our-insights/enduring-ideas-the-7-s-framework より引用

4Sの重要性

ハードの3Sを変えようと思っても、すぐには変わらないことはおわかりだと思います。組織を変化させようと思うと、ソフトの4Sから取り組むことになります。比較的変化させやすいソフトの4Sとはいえ、長い年月をかけて培ったものなので、企業内で重要な要素となっています。このソフトの4Sの重要性をしっかりと認識した上で変化させていく必要があります。

・価値観(Shared Value)の重要性

図を見ると明白ですが、価値観は真ん中にあり、他のすべての要素の要となっています。価値観がぶれると他の6つのSはすべて(ハードもソフトも)まとまらなくなります。1つ1つの企業が有している価値観はすべての基礎となっており、その価値観に人が共感し、企業活動ができるので、この価値観を社会へ発信していくことは非常に重要です。

・スキル(Skill)の重要性

営業力、技術力、販売力などの企業全体の能力は、他社と差別化できるポイント、つまり競争力の源泉となっています。企業内にどのようなスキルがあるのかを丁寧に洗い出し、さらに伸ばすにはどうしたらいいのかを考えると、より強いスキルを構築できます。また課題がどこにあり、それを解決するにはどのようにすればいいのかを定期的に見直すことで、より強い企業となることができます。企業のスキルを認識し、より効果的な活用方法を考えることは重要です。

・人材(Staff)の重要性

人材はその企業にしかいない知的資産の1つです。特に中小企業や小規模事業者においては人材不足が指摘されています。その中で社会は「働き方改革の推進」が進んでいますので、より少ない人材で効率よく業務を行っていくことは大切です。効率化を行う中で、粗雑になってはいけないものもありますが、ここを誤ると企業の信頼力低下につながっていきます。そうならないように企業を支えてくれるのは、企業理念を理解し、実践できる人材となります。そのため、企業理念を理解し、困ったら理念に立ち返って企業にとって正しい判断ができる人材を育成していくことが重要です。

・スタイル(Style)の重要性

社風や企業文化は自然とその企業の特徴を表します。良い社風や企業文化の企業には魅力的な人材が集まってきて、人材の定着率も良くなります。このようなことは社会的な信頼にもつながってきますので、いかに良いスタイルを構築するのかは非常に重要です。

 

このようにソフトの4Sがきちんと確立していくことは、ハードの3Sが確立していく元となってきます。逆にハードの3Sを見直したいのであれば、それに合わせてソフトの4Sから見直していく必要があるといえます。

定量分析と定性分析

定量分析とは?

定量分析とは、企業の財務諸表をもとに分析 のことで、財務分析と呼ばれることもあります。つまり、貸借対照表(B/S)、損益計算書(P/L)、キャッシュフロー計算書(C/F)の数値を読んでいきます。

その際、企業の規模や成長ステージを考慮する必要があります。定量分析を効率的に行うために勘定科目に関して重要な視点は以下の3つです。

・数字の大きい勘定科目の変動を見ていくこと
・勘定科目の構成が前期や前々期と比較して大きく変わっているかいないかを見ていくこと
・前期や前々期の財務諸表の勘定科目と異なるものが発生している時、その原因を見ていくこと

このほか、売掛金が多いのに買掛金が少ない場合、つまり販売した商品サービスのお金が入ってくるのは数か月後なのに、その商品サービスを提供するための仕入れや外注費の支払いが当月の場合は黒字倒産の危険もあるため要注意です。

また、いくつかの経営分析の手法も参考になります。経営分析とは、自分の会社の状況を冷静に見つめなおす作業です。経営活動の結果としての財務諸表の数値を収益性、成長性、生産性、安定性の指標でとらえ、その数値が出てきた背景や原因を考えていく必要があります。

・収益性の分析(会社の収益力)…主に損益計算書から利益の獲得状況を判断します
・成長性の分析(会社の成長力)…売上や利益の推移から、企業の将来の成長性を判断します
・生産性の分析(会社の生産力)…生産の投入と産出高との関係を見ることで企業の経営能率を判断します
・安定性の分析(経営の安全力)…過去のフローの結果としてのストックの健全性を判断します

経営分析は経営改善に役立てるために行いますが、今は経営状態が良くても、悪くなりような問題が見えたら、経営状態が良いうちに解決策を見出していくことが大切です。悪くなってしまったら資金調達も難しくなりますし、問題解決のための投資も行いづらくなるからです。

また、経営分析の結果を単に平均値と比較して捉えるだけでなく、現状と一致している数値か、現状とずれている数値かをきちんと判断し、現状と一致して良いならその部分をさらに伸ばすこと、悪いなら問題を解決することを考え、現状とずれているのであれば、ずれの原因と対策を考えていく必要があります。

定性分析とは?

定性分析とは、企業の財務諸表には表れてこない特徴を分析することです。定性分析は、数値で表しにくい情報のため、多面的で柔軟性のある分析を行うことができます。人材、理念、ネットワーク、技術力などといった知的資産が定性分析の対象となります。しかし、定性分析は主観的になってしまう側面もあるため、客観性に欠けると指摘されることもあります。そのため、いかに論理的に示すかということが重要になります。

定性分析には下記のものがあります。

1.企業内に属するもの
・経営者の資質、リーダーシップ、経営経験、経営戦略など
・従業員のキャリア、ノウハウ、技術力など
・企業の組織力、データベース、企業風土など
・企業の沿革、社歴など

2.企業外に属するもの
・市場環境、競合他社の動向、参入障壁、業界動向など
・金融機関との関係性、取引先との関係性など

小規模事業者になればなるほど、経営者の資質やリーダーシップ、経営者のもつネットワーク力などの占める割合が大きくなります。定性分析は客観的なデータを活用できるものが少ないことから、経営者や従業員に対してヒアリングを行って把握していきますが、経営者のヒアリング結果と従業員のヒアリング結果が必ず一致するものではない点に注意する必要があります。

例えば、経営者は社内のコミュニケーションがよく取れていると判断しているにも関わらず、従業員の一部はそのように感じていないというケースがあります。また、経営者は従業員の能力をそこまで高く評価していないにもかかわらず、顧客からの評判が良い原因や顧客がリピーターになる原因はそこにあるというケースもあります。

このように、定性分析は主観がかなり入ってくる場面もありますので、多角的にヒアリングを行い、客観的に評価するように努力しなければなりません。定性分析の方法には、VRIO分析、アンゾフの成長分析、PPM分析、バリューチェーン分析、4P分析、SWOT分析、PEST分析など様々な分析手法がありますので、複数の分析手法をうまく組み合わせて活用することが求められます。

知的資産経営報告書への記載事項

企業概要

知的資産経営報告書の最初は、多くの場合、社長や代表の挨拶が書かれています。そして企業概要として例えばこんな内容を記載します。

1.会社名
2.所在地
3.連絡先
4.創業時期
5.資本金
6.従業員数
7.URL
8.経営理念・社是など

その後、会社の歴史を記載します。ここから徐々に会社案内とは異なり、深いものになっていきます。

創業理由、創業時の事業内容、工場建設の時期や理由、移転の時期や理由など、会社の歴史の1つ1つにスポットライトを浴びせていきます。外部環境の変化、当時の経営者の想いや考え、当時の経営者が思い描いた会社の方向性などを振り返りながら現在の企業の姿を見ることで、言葉にできないことまで見えてきます。

知的資産経営報告書を作成する目的が事業承継の場合、この部分の承継は非常に重要な意味を持ちます。反発していた現在の経営者や前代の経営者のすごさを感じたり、熱い思いを知ったり、大変だったことを知ったりすることで、後継者が言葉にしようとしまいと、後継者の心に響くことがあるからです。

商品サービス

知的資産経営報告書は商品サービスのカタログではないため、商品サービスの写真を並べるだけでは意味がありません。

どんな商品サービスがあるのかを記載するのは当然のこととして、その商品サービスが生まれた背景、生まれるまでの苦労、商品サービスの強み、他社との違いなどを記載して下さい。この時、商品サービスの製造、生産、検査、管理、発注から納品までに関わる従業員1人1人の強みや企業風土などにも目を向け、企業を支えている知的資産をたくさん見つけて下さい。

価値創造ストーリー

価値創造ストーリーこそが会社案内と一番異なる部分になります。価値創造の書き方は決まっていません。

例えば、人的資産、構造資産、関係資産という分類に沿って企業の知的資産を洗い出し、それぞれのつながり、関連性を示していく方法があります。この方法で知的資産を整理すると、人的資産の構造資産化ができていないものは何か?そもそも人的資産の構造資産化できるものなのか?できないものであればどうしていくと良いのかなどを考えるきっかけができます。

別の価値創造ストーリーの方法としては、経営理念から業績までの流れで見ていく方法があります。企業の流れとしては、経営理念や経営者の想いがあり、努力工夫が施され、それが企業の強みとなり、商品サービスとして提供され、その結果が業績という形で表れてきます。

これを逆から見ていく過程で価値創造ストーリー化していきます。つまり業績を構成している商品サービスの分解、各々の商品サービスの強みの分析、それを構築した努力や工夫、そしてそれらが理念につながっているか、という点を見ていくのです。この方法で価値創造ストーリーを見ていくと、会社全体にまたがる強みと課題が見えやすくなります。どうしてこの強みが構築されたんだろう?というものをあらゆる角度から見ていくからです。

この他にも色々な価値創造ストーリーがあると思います。どの方法が良い、悪いということはありません。

あくまでも知的資産経営報告書は何かの目的で、誰かに読んでもらいために作るものですから、その目的・対象者にとって一番わかりやすい方法で記載すればよいのです。広い視点で最適な価値創造ストーリーを記載して下さい。

現在の価値創造ストーリーが完成したら、それをベースに中長期の価値創造ストーリーを考えて記載して下さい。例えば3年後の自社の姿です。そのために必要な知的資産は何か?その知的資産を構築するためにどうするのか?そんな視点で将来の価値創造ストーリーを構築して下さい。

知的資産経営報告書作成の際の注意事項

知的資産経営報告書を作成する際に一番苦労するのは価値創造ストーリーです。

なぜ?を繰り返し問い続けるので、「面倒。もうやめたい」という心の声が聞こえてくることもしばしばです。

しかし、ここで適当にストーリーを作ることだけは絶対にやめて下さい。そうしたくなる気持ちは誰よりも一番わかりますが…

価値創造ストーリーがつながらないということは、何か知的資産が抜けているか、何か課題があるかなのです。これに気づくことこそが企業の発展のもとになります。是非諦めずに価値創造ストーリーと向き合って下さい。

 

知的資産経営報告書の活用方法

知的資産の整理と知的資産経営報告書の作成・開示との違い

知的資産を整理することと、知的資産経営報告書を作成・開示とはどのように違うのでしょうか?

知的資産を整理することは、企業内にどのような人的資産・構造資産・関係資産があり、そのうちのどの知的資産と知的資産がどのように関連しているのかを認識することです。その際、財務諸表(決算書)の数値も参考にしながら、どの知的資産がどんな結果を生んでいるのか、どんな知的資産のおかげで商品サービスが提供できているのかも把握することが大切です。

この知的資産の整理は、企業の営業活動を振り返ることなのでどの企業も行う必要があります。

これに対して知的資産経営報告書は、開示目的と開示対象者に合わせて作成するものです。つまり、開示目的と開示対象者により、記載内容も記載方法も変わってきます。

例えば、融資目的で知的資産経営報告書を作成する場合、原価率も考慮して記載しますが、求人目的で作成する場合には原価率を入れません。しかし知的資産の整理の段階ではこの作業を行うこととなります。このように特に知的資産経営報告書の作成の場合は開示目的と開示対象者によって内容を変える必要があるので、慎重さが必要です。

知的資産経営報告書の活用方法(内部マネジメントツール)

知的資産経営報告書を活用する方法にはどのようなものがあるのでしょうか?これには主に内部マネジメントツールとしての活用方法と、外部コミュニケーションツールとしての活用方法とがあります。

まず、知的資産経営報告書の内部マネジメントツールとしての活用方法ですが、これは経営者の頭の整理、事業承継、従業員(幹部)との方向性の一致などです。

経営者は常に経営環境を分析し、チャンスを窺い、経営方針を決めたり経営戦略を練ったりしています。しかし、頭の中だけで考えていると、矛盾したことを考えていたり、堂々巡りになってしまったり、数値に根拠のない計画を立ててしまったりすることがあります。それは、経営者はどうしても目先の売上に目を向けがちだからです。

そこで冷静に会社の状況をつかむために、経営者の頭の整理をする必要があります。その1つの手段として知的資産経営報告書を作成することが有用です。

この場合の知的資産経営報告書の作成目的は、中長期の事業計画の策定、経営者の頭の整理、経営幹部との情報共有などになるでしょう。知的資産経営報告書をよむ対象者は、経営者、経営幹部、場合によっては従業員でしょうか。この目的や対象者に合わせて知的資産経営報告書を記載するのであれば、財務諸表の数字も含めて丁寧に分析し、各知的資産との関連性を見ていきます。

従業員1人1人のスキルやノウハウを評価する何かが見えてくるでしょう。

自社の強みの源泉を把握することができるでしょう。

同業他社との違い、同業他社にはない差別化の源泉が見えてくるでしょう。

逆に、自社の課題も見えてくるでしょう。

こうした良いこと、悪いことをすべて洗い出し、特に経営者と経営幹部でしっかりと認識し、方向性を決めていくことは決して悪いことではありません。内部マネジメントを目的とした知的資産経営報告書を作成することで、企業の強い基盤づくりに活用することができるのです。

知的資産経営報告書の活用方法(外部コミュニケーションツール)

企業は外部とのコミュニケーションツールとして、会社案内やホームページなどを使っています。

会社案内やホームページをやめて知的資産経営報告書を作って使わないといけないのか?というと、そんなことはありません!

会社案内やホームページは、不特定多数の人へ同じ情報を伝えるには非常に有益なツールです。特にホームページは海外の人も見ることができますので。

しかし、会社案内やホームページは、開示対象や開示目的によって分けることができない、という大きな弱点を持っています。

知的資産経営報告書は、「誰に」「何のために」「自社のどんな情報を」「どのような形で」開示しているかを分けて作成するのに対して、会社案内やホームページは画一の情報を提供するツールだからです。

知的資産経営報告書は、既存の会社案内やホームページを作成する時よりも細かいところまで分析を行いますし、論理的一貫性を徹底します。また、決算書の数字に出てこない知的資産とはいえ、その根拠や可能な限り数字にもこだわりますので、信憑性の高いものといえます。

では外部とのコミュニケーションにはどのような種類があるのでしょうか?
それは、求職者に向けたもの、金融機関へ向けたもの、株主や投資家に向けたもの、顧客に向けたもの、取引先に向けたものなどです。

このように開示目的と開示対象者に合わせて作成された知的資産経営報告書は、従来の会社案内やホームページとは異なり、特定の開示目的や開示対象者にとっては有益なコミュニケーションツールになります。

知的資産経営報告書とは?

知的資産経営報告書とは?

知的資産経営報告書とは、自社の知的資産、つまり財務諸表には表れにくい強みを開示するために作成する報告書です。知的資産経営報告書には、自社にしかない強み、つまり競争力の源泉が記載されていますので、自社の魅力をアピールすることができます。また、財務諸表から知的資産を拾い出すことで業績と知的資産の関連性を見ることもできます。

近年、担保や保証人に依存せず、事業や企業の将来性や経営者の資質などを見て融資を行うという事業性評価融資が行われています。こうした将来性や経営者の資質は知的資産です。そのため、知的資産経営報告書を作成して活用すると、金融機関へ効果的に自社の知的資産をアピールすることができます。

しかし、知的資産経営報告書の作り方を間違えると、中途半端なものになってしまうという点を意識することが大切です。知的資産経営報告書は後に記載するとおり、様々な活用方法があります。今回知的資産経営報告書を作成する目的は何か?この知的資産経営報告書を読む人はどんな人なのか?何を期待しているのか?このようなことを意識して作る必要があるのです。

事業計画書も、知的資産経営報告書も、作成目的が異なれば、読み手が異なってきます。つまり、記載内容に期待される内容が異なってくるのです。知的資産経営報告書を作成するには多くの時間と手間がかかります。そのため、時間がたつうちに、知的資産経営報告書を本来作成することになった目的や読み手を忘れてしまいがちです。するとどうなるか?「知的資産経営報告書を作成すること」が目的となってしまうこともあるのです。

しかし、知的資産経営報告書を作成することが目的ではありません。時間の経過と共にこれが目的とならないようにする必要があるのです。「誰に」「何のために」知的資産経営報告書を開示するのか?これを一番はじめに考え、知的資産経営報告書が完成するまで貫かなければなりません。それによって記載内容や記載方法が異なってきますので。

知的資産経営報告書というものが必ず必要か?

知的資産経営報告書の使い道は多岐にわたります。また、知的資産経営報告書を作成する際に行う会社の棚卸に大きな意味があります。そのため、知的資産経営報告書を作成することは非常に有用です。

しかし、知的資産経営報告書を必ず作らなければならないのか?といったら、そうではありません。どのような場合に知的資産経営報告書を作成すると良いかを考えるにあたり、「誰に」「何のために」自社の知的資産や知的資産経営を開示したいのか?ということを考える必要があります。

この問いにきちんと答えると、「知的資産経営報告書」という形式は必要ないという場合も出てきます。なぜなら、「知的資産経営報告書」は自社の知的資産や知的資産経営を開示するツールの1つにすぎないからです。

自社の知的資産や知的資産経営を開示する目的や対象者によっては、知的資産経営報告書よりもホームページ、チラシ、会社案内、名刺など他の媒体であることが望ましい場合やチラシや名刺など他の媒体の方がいい、という場合だってあります。また知的資産経営報告書を作成するとしても、目的や対象者が異なれば記載内容や記載方法が異なってきます。

ここで間違えてはいけないのが、仮に知的資産経営報告書を作成しなくても、開示対象者と開示目的に合わせて自社の知的資産や知的資産経営を開示する必要はあるということです。誰に、何のために、自社の知的資産を伝えたいのか?そのために最適なツールは何か?この問題と向き合い、知的資産経営報告書が最適だと判断されたら是非知的資産経営報告書の作成に取り組んでみて下さい。

その際、弊所がサポートさせていただくことも可能です。お気軽にお問い合わせ下さい。

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